名札・ネームプレートにまつわるショートストーリーvol.4
今回で連載4例目となる、名札・ネームプレートにまつわる、ショート・ショート。
今回のショートストーリーは「名札と時間の経過」について。 題して「久しぶりに課長と飲みに行きました」。30代前半、メーカー勤務の会社員さんからの投稿です。
久しぶりに飲みに行くことができたきっかけは、「名札」でした
その日私は会社の他部署を交えた会議で、久しぶりに「先輩」に会いました。
胸元の名札を見ると、役職名が“課長”になっていました。
知らない間に月日が経っていた。
驚きました。
その感覚にあきれながらも、たまらなく懐かしくなり、私は課長になった先輩を飲みに誘うことにしたのです。
そのころ先輩の名札には「係長」の文字が
先輩とは、5年ほど前同じ部署で働いていました。そのころ先輩は係長でした。私生活でも大変お世話になり、仕事のイロハを教えてくれたのも、その頃の先輩でした。
同じ部署にいる頃は、お酒好きな先輩と私とでよく飲みに行きました。
大きな仕事が終わったときの「お疲れさん会」。
仕事や人間関係に不満を抱いたときの“愚痴大会”。
帰り際に軽く飲んだり、何かにつけて先輩と一緒に飲みに行っていました。
先輩は飲みにいくといつも私の話を、ただただ聞いて相槌をうつだけ。
それでも先輩と飲みに行った次の日は、すっきりした気持ちになり、新たな気持ちで仕事に挑むことができたものです。
私は先輩をとても尊敬し、仕事を一緒にできるということを誇りに感じていました。
仕事に追われ「何か」をなくしたのかもしれない
しかし5年前の人事異動で、先輩とは別の部署になってしまいました。
別の部署にうつった当初は、仕事を覚えるのに必死で、残業が続き、精神的にも肉体的にもきつい日が続きました。
3、4か月経ち新しい部署での仕事に余裕ができたとき、私は少し成長したものの、仕事に対する何かをなくしていました。
名札は役職だけでなく時間の流れを教えてくれる
そんな折の会議で久しぶりに先輩に会って、胸の名札を見たとき、はっと我に返った思いがしました。月日の流れを否応なく感じたのです。
5年の間に先輩から何度か誘いを受けていたにも関わらず、日程が合わず、なかなか飲みに行くことはできませんでした。
でも本当のことを言うと、どうにかなるケースもあった。
にも関わらず先輩と飲みに行く機会を、知らず知らずのうちに避けていたのかもしれません。仕事で余裕をなくした私は、先輩との飲み会で得られる充実感や、リラックスできるひとときの存在を忘れかけていました。
名札は役職や名前だけでなく、月日の経過も教えてくれました。
課長と久しぶりに飲みに行ったことで、私は大切な何かを取り戻すことができたと思っています。
名札・ネームプレートにまつわるショートストーリーについて
キョウリツサインテックでは、名札やネームプレートにまつわるショートストーリーを募集しています。お題は「名札」「ネームプレート」にまつわるものであれば、基本的問題ありません。